網入ガラスはナゼ熱割れしやすいの?

網入ガラスが熱割れしやすいのは、
ガラスの許容熱応力が低いからです。
 だから、窓にフィルムを貼るときは、
ガラスが熱くなりにくいフィルムを 選ぶ必要があります。
日射吸収率を良くご確認下さい。

網入ガラスはナゼ熱割れしやすいの?

 熱割れするリスクはある程度予測することが可能で、“ガラスの中心温度とサッシ温度の温度差”とガラスの環境によって決まる“危険係数”の積が、ガラスのひずみに対する耐久力(許容熱応力)より小さければ、熱割れする危険性が低いと考えることができます。これは、どの様なガラスでも同じです。

【危険係数:K】×(【ガラスの中心温度:Tg】-【サッシの温度:Ts】)≦【ガラスの許容値】

 では、網入ガラスはなぜ熱割れしやすいのでしょうか?それは、一般的なフロートガラスに対して、網入ガラスの許容熱応力が著しく低いことが原因となります。同じ10mmの厚みのガラスで比較すると、網入ガラスの許容熱応力は、一般的なガラスの56%未満しかありません。この結果、ガラスの温度差(Tg-Ts)も、通常の56%未満になるように設計しなければならないのです。

 例えば東京都内の一般的なオフィスビルで、ガラスサイズが1㎡の可動式窓ガラスを想定します。この時の危険係数:Kは最大6.12となりますので、網入ガラスの場合、その温度差が16℃以下になるように気を付けなければなりません。29℃まで許容できる一般的なガラスとは大違いです。

 板ガラスの場合、ガラスの温度差(Tg-Ts)はおおよそ下記の式に近似できます。

ガラスの温度差(Tg-Ts)= 0.05 × 日射量:I × 日射吸収率:A

 日射量は季節な方角、時刻によって大きく変化しますが、最大で800W/㎡に及ぶこともあります。つまりガラスの温度差(Tg-Ts)を16℃以下に抑えるためには、日射吸収率:Aを40%以下に抑えなければなりません。ちなみに普通のガラスであれば日射吸収率:Aは74%まで許容されますので、その差は明らかです。

 では、日射吸収率:AW、日射反射率:RWのウィンドウフィルムを10mmの網入ガラスに内貼施工した時のガラスの日射吸収率はどうなるでしょうか?概算値ですが、下記の式の様になります。

全体の日射吸収率:A = 0.20 ×(1+0.73×RW)+ 0.73 × AW

 例えばRW=10%前後の非ミラータイプのウィンドウフィルムであれば、AWは25%以下でなければいけないことになります。RW=38%前後のミラータイプのウィンドウフィルムであれば、AWは20%以下にしなければなりません。非常に選択肢が限られてしまうのが、網入ガラスへのウィンドウフィルムの施工になります。

それでは、いろんなウィンドウフィルムを比較してみましょう。

 右の表に、様々な物性のウィンドウフィルムの一覧表を作成してみました。これらの製品は、よく見かけるものばかりです。しかしながら、網入ガラスに施工できそうなものはたった2種類だけ。しかも基本性能を見比べても、施工できるかどうかは全く判断できません。もちろん、ガラスのサイズが大きくなったり、使用環境、ガラスの向き、方角、カーテンの有無などが変わることで熱割れリスクの危険係数:Kは、2.2~9.0前後まで大きく変動しますので、この表で施工可否を一概に言えるわけでもありません。この様な背景から、一般的に『ウィンドウフィルムは網入ガラスには貼れない』『網入ガラスにフィルムを貼ると必ず熱割れする』という考え方が広まったと考えられます。

網入ガラスにフィルムを貼る

 網入ガラスには、遮熱仕様の窓ガラスは現在販売されていません。(詳しくは着色ガラスの説明をご参照下さい。)でも消防法の都合から網入ガラスを使わざるを得ないとき、その窓ガラスは遮熱改修・省エネ化・脱CO2から置いてけぼりにされてしまっています。

 では、そんな網入ガラスの遮熱化をしたい場合はどうすればいいのか?まずは遮光・遮熱カーテンやブラインドをきちんとすることが一番の近道です。ただ部屋の中を暗くしたくない、お店の中をお見せしたい、せっかくの風景を風景を楽しんでもらいたい、など、カーテンやブラインドで窓ガラスを隠してしまいたくない場合は本来、日射調整フィルムの出番になります。

 これは日射調整フィルムに限らず遮熱塗料の場合でも同じですが、結局はキチンと熱割れリスクを試算して、許容される日射吸収率を確認し、その範囲で対応するしかありません。あるいは熱割れリスクを高くしている原因を緩和するのも一つの手かもしれません。でもフィルムメーカー各社はよほどの大型案件でもない限り、個別に細かな調査や検討が必要な網入ガラスへの対応はきっと面倒で、だから『網入ガラスには施工できない』としてしまうのかもしれません。そうして、網入ガラスは省エネ化に対して置いてけぼりにされてしまっているのでしょう。

 少しでも効果の高い日射調整フィルムを施工するためには、許容される日射吸収率を大きく確保する、つまり、危険係数:Kをなるべく小さくすることが大事になります。そこで改めて、危険係数について確認していきます。

 危険係数:Kは、下記の式で計算されます。

危険係数:K=4.8×面積係数:K1×影係数:K2×カーテン係数:K3×エッジ温度係数:K4

 ですが遮熱リフォームの場合、面積係数を決める窓ガラスの面積を変えることはむつかしいでしょう。影係数は窓にうつる影の形で決まりますので、自分ではどうしようもありません。エッジ温度係数とは、ガラスの設置方法で決まる係数なので、変更はやはり容易ではありません。結局カーテン係数:K3を調整するしかありません。

 もし今、暑いと感じたときのために、完全遮光型の厚手のカーテンやブラインドを、窓のすぐ近くに設置しているのであれば、これを窓から15㎝くらい離して設置してみてください。それだけで危険係数が13%減少し、日射吸収率の許容値も13%上昇します。高性能の日射調整フィルムを入れることで、カーテン・ブラインドを半透明な薄手のものに変更し、かつ距離を15㎝くらい離すことができれば、危険係数が27%減少し、日射吸収率の許容値も27%上昇します。使えないブラインドをいっそ外してしまえれば、危険係数が33%減少し、日射吸収率の許容値も33%も上昇します。カーテンやブラインドを変えたり外したりすることは結構不安に感じるかもしれませんが、その分選択できる日射調整フィルムが大幅に増え、ガラスの遮熱改修効果を大きくすることができます。結局、網入ガラスの遮熱改修は、日射調整フィルムとカーテンの両方を合わせて検討することで最適な回答が見つかると考えています。

iQUEフィルムで改修を行うとしたら?

 ここで改めまして、東京都内の一般的なオフィスビルの西面にガラスサイズが1㎡の可動式窓ガラス(FLG5mm)に、日射透過率13%、日射反射率35%の一般的な厚手のカーテンが設置されているとした場合を想定します。

 夏の午後、この窓ガラスからは500W/㎡を超える強い西日が当たることになりますが、このカーテンの遮光性のおかげで、カーテンを通過する日射熱はせいぜい65W/㎡程度にすぎませんが、実は窓から侵入した日射熱の内175W/㎡しか反射せず、残りの260W/㎡分の日射熱はカーテンに吸収されてカーテンが熱を持ち、結果的に部屋の窓際を暑くしてしまいます(これを熱の再放射と言います)。つまり、結果として65%の日射熱が室内に侵入することを許していることになります。

 このカーテンのままですと、施工できる一番良い性能の日射調整フィルムは遮蔽係数=0.63のiQUE78FGとなります。このフィルムを施工すると、窓から侵入する強い西日が315W/㎡になりますので、カーテンの通過日射量、吸収日射量はそれぞれ、41W/㎡、164W/㎡まで減少し、室内への日射熱の侵入を41%まで削減できることになります。これは37%の削減効果になります。

 ところが、カーテンを日射透過率55%、日射反射率40%の一般的なレースカーテンに取り換えた場合、ガラスの日射吸収率の許容値が27%も上昇するので、より遮蔽係数が良いiQUE73FG(遮蔽係数=0.50)の施工が可能となります。その結果、窓から侵入する強い西日を250W/㎡まで抑えることができ、さらにレースカーテンで日射を100W/㎡反射して、138W/㎡の日射熱を通すのみになります。ちなみにレースカーテンの日射吸収率はたったの5%なので、室内への侵入を許した日射熱は150W/㎡、30%まで削減できることになります。これは施工前から見て54%の削減効果。しかも室内が明るくなりますから、照明の省エネ効果も上乗せできる可能性があります。

 ほら、日射調整フィルムとカーテンの両方を合わせて検討した方が、より最適な回答が見つけられたでしょ?

 でもだからでしょうか。ウィンドウフィルムメーカーやその施工業者、あるいはカーテン/ブラインドメーカーやその施工業者に聞いても、こんな合わせ技のご提案を頂けることは稀ではないでしょうか?熱割れリオスに詳しくて、網入ガラスの遮熱改修を何とかしたいといつも考えている私たちだからこそ、こんな提案ができるのかもしれませんね。

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